Linux World Conference Japan '99報告記
去る1999年3月18、19日に東京・有楽町の東京国際フォーラムにて
Linux World Conference Japan '99が開催されました。
ここでは、私が個人的に見学したセッションについてまとめています。
やまだあきらさんのレポートと
他の方々のレポートへのリンク
去る1999年4月23日に、JUS東海
の勉強会でLWCJ99の報告を行いました。そのときの発表資料をここに
置いておきます。
jus-mgp.tar.gz(635446bytes, mgp source +
jpeg)
初日は以下のセッションを見学しました。
このセッションそれなりの目玉だったはずなのですが、個人的な事情で
最後のほうしか見ることができませんでした ^^; しかしまあ、
- あと3年は先頭を切ってLinuxに関わって行きたい
と言っていたことは強く印象に残っています。
ある個人がオープンソースに関わる上で、
その人のモチベーションを維持し、活動を続けるというのはとても
大変なことだと思います。
実際、途中でleaderがプロジェクトの継続を断念するという事態になって
しまったオープンソースソフトウェアはいくつか存在します。
もっとも、Linux程のものともなれば、Linusがたとえ止めてしまったとしても
開発は継続できるでしょうけど... そういった「誰かが引き継げる」点も
オープンソースソフトウェアの良いところですね。
基調講演は、RedHatのCEOであるBob Youngが行いました。一般の
注目度もなかなか高かったようで、テレビカメラが何社か来ていました。壇上に
現われたときにはフラッシュの嵐で、「私はシンディー・クロフォードと違って
写真を取られ慣れていないんですが」と言っていました(同時通訳の方を
聞いていたので、実際になんと言ったかはわかりません ^^;)。
彼はまず、なぜRedHatがLinuxを扱うようになったかについて話しました。
最初、RedHatはComputer lease業を営んでいたそうです。その顧客向けに
発行しているNewsletterで、大手の出版社が取り上げない「フリーソフト」
に関して取り上げて行くうちに、フリーソフト界に存在する経済モデルの
優位性を確信し、それを実際にビジネスとして扱うようになった、と
いうことでした。
ここでいう「フリーソフト界の経済モデル」とは、いわゆるオープンソース
のことです。彼はX windowを例に出し、オープンソースであることによって、
内外からの優れた技術が開発に注がれることを強調していました。
また、将来アプリケーションが揃ってくれば、
デスクトップ環境としてもLinuxが普及してゆくだろうと語りました。
RedHatでGNOMEを採用するという話題もありましたし、このあたりは
RedHatの戦略を踏まえた発言なのだろうと思います。
最後に、「自分でコントロールできるOSをこれからも提供してゆく」という
趣旨の発言でこのセッションを締めくくっていました。この発言からも、Linuxの
オープンソースという特徴をとらえているように思います。
このセッションは、実はそんなに期待して聞きにいったわけではありませんでした。
個人的にはもっぱらPostgreSQLを使っているので...
そんなわけであんまり真面目にまとめる気力が出ないのですが ^^;
以下のような感じでした。
- Unix, NT, Linuxをサポートプラットフォームの3本柱とする
- IntelがMicrosoft以外のOSにもサポートをしているように、Oracleも
Linuxをもう一つのプラットフォームとして対応する、だそうです。
- Linux Japan 1999年1月号からLinux/NTの比較表を引用
- 巷でも有名なMicrosoftのWWWにある比較表ではなく、Linux Japanに
掲載されたものを引用していました。いくら宣伝をしようと、
やはり世間一般の認識はこういうものかなんですね :-)
Oracleは特に、Linuxの安定性、堅牢性、メンテナンス性や
低コストであることを評価しているようです。また、64bitOS
としての期待もあるようです。
質疑応答では、Intel以外のアーキテクチャへの対応やディストリビューション
の対応についての質問があがりました。これに対し、Oracleは
「主流であると判断すれば他のアーキテクチャでも対応する」
「主要な商用ディストリビューション(RedHat, Turbo Linux)に対応する」
と答えていました。
記者会見は、70人程度が入ることのできる部屋に100人ぐらいを
押し込めた状態で行われました
内容的には基調講演とかぶる点も多かったのですが、以下のような
やりとりがなされました(やりとりの記述に関してはあまり正確ではない
かもしれません)。
- Q. ディストリビュータとして、何を目指すのか
- A. distributerという言葉は、Linuxの普及にともなって卸業的な
意味あいが出て来たので、builderなど別の名称を使うべきかも知れない。
我々が作っているのは、そういったbuildされたものである。
我々が主眼においているのは、ソフトの販売ではなく
サポートを販売することである。
- Q. Linuxは何ができるのか? Windowsと対立するものなのか?
- A. OSという意味では、Windowsと競合している。
OSは、さまざまなことを行うためのものである。
我々がこれまでに成功した分野と言うのは、サーバ分野である。
そのなかで、一般利用者はすでにLinuxをつかっているかもしれない。
よく「いつデスクトップ分野でWindowsに取って代わるか?」という
質問をうけるが、アメリカと日本では答えが違ってくるだろう。
日本では、ジャストシステムのオフィス製品がportingされるという発表もあり、
今後日本企業でもLinuxが一般に使われる可能性が出て来ている。
- Q. 出資を受ける際の基準は?
- A. 出資は我々に取っても戦略的に重要である。
設立時のよりどころは、共同設立者のMarkの蓄えであった。
現在、Intel, IBM, Compac....等から出資を受けているが、
彼らの投資はお金だけの問題ではない。
これまで、このような大企業からの支持は得られなることがなかったが、
彼らが出資をしてくれるようになって、お墨付きを得ることができた。
しかし、今後の出資を受ける基準については別の問題である。
そもそも、我々の目標は素晴らしい技術を持った会社となることであった。
戦略的には、(出資に関しても)その目的を達成するためのことを行いたい。
- Q. インターネットからダウンロードできるのは、
開発費などで割に合わないのでは。どういうビジネスモデルを考えているか?
- A. それこそがRedHatの実現した貢献ではないかと考えている。
そもそも、設立時の目標は特定企業との競争ではない。
Opensourceというメリットを提供してゆきたい。
(いいかえれば、我々が行っているのは)ソフトウェアビジネスでは
ないのかもしれない。
既存のビジネスモデルに因われる必要はない。
アメリカの、石鹸やケチャップのようなビジネスモデルに注目した
(注:アメリカにおける石鹸やケチャップは、ブランドイメージの確立した
会社が大きなシェアを持っているそうです)。
ブランドネームを築くことが大切である。
それによって、信頼を得ることができ、(顧客は)サービスビジネスとしても
(我々を)選んでくれるだろう。
- Q. なぜWindowsから切り替える必要があるのか
オープンソースは機能強化が鍵だとおもうが、統一性を失うことによる
問題はないのか?
(非常に長い質問だったのだが、要約するとこういう2つの質問を
同時にしていた気がする)
- A. 既存の技術と競合する必要はない(最初の問に対する答え)。
次世代のアプリケーション開発においては、信頼性が必要になる
Windowsは信頼性に欠け、バグフィックスのサポートについては、
確実なものではない。
RedHatは、それが一般的なバグであれば、積極的にサポートする。
しごく特殊な問題であれば、それはその実装を行った人で
解決してもらうことになるだろう
- Q. 日本に子会社を設立する予定はあるか?
- A. 今のところ、答えられない。
- Q. 他のベンダとの差別化は?
OSの互換性の問題は?
- A. 特に差別化は考えていない。Linuxの利点はそういう所にはない。
そういったことは、Linuxによって得られる利点を損なってしまうだろう。
それよりも、(Linuxの)質を高めることを考えて行きたい。
互換性は、Linuxと関わって来た最初のころからの懸念である。
ここ7年の流れでは、Linuxはむしろ一つの方向に収束している。
オープンソースであることが、その流れの原因であろう。
質問者は全員が日本人であったにもかかわらず、英語で質問する人が
多かったです。それを受けて、Bob Youngは
「つぎにくるときは、日本語に堪能になってきますから、日本語で質問を
受けたいと思います。20年ぐらいかかるかもしれませんが。」と
冗談を飛ばしてました。皮肉に聞こえなくもないですけど ;p
この説明会は、Linux Communityにかかわる人達にとって今回の目玉である
といえるでしょう。開場前から、非常に多くの人がならんでいました。
Bob Youngの記者会見と同じ部屋を使い、ざっとみても収容人数70人の倍ぐらいは
あるであろう人数が来ていました。この説明会は他のセッションと違い、
事前登録を必要としないことになっていたので、余計に人が集まりやすかった
という事情も関係していたのではないかという気はします。
その説明内容については、
現在WWWで公開されているものを参照したほうが良いでしょう。
質疑応答では、以下のようなやりとりがありました(その場でとったメモと
記憶に頼って書いているので、
正確とはいいがたいです。ですから、これを全面的に信じないでください ^^;)。
- Q. 専属職員を置く予定はあるのか?
- A. ある
- Q. Doc-CDとはなにか?
- A. WWW, MLのログをまとめたものである
- Q. アップデートCDは配付しないのか?
- A. 今のところその予定はない
- Q. 法人会員への期待、役割は?
- A. 特に考えていないが、コミュニティにはできないような
発想を期待している
- Q. 他のユーザグループと協会との関係は?
- A. 求められれば、作業の一部を手伝うなどのことを考えている。
そのユーザグループの活動がきちんとしたものであれば、
特別会員として扱いたい。
- Q. 法人会員のメリットは?
- A. 協会は、ユーザや企業が同じくして話し合える場を提供する。
例えば、企業間での調停や、まとまった情報のアクセス、アナウンスなど
- Q. 定会のようなものはあるか?
- A. ある。詳しくはWWWを参照。
議決権は1口1票
- Q. Linuxコンソーシアムとの違いは?
- A. 対象とする範囲が違う。近いうちに、一つの団体となる予定
Community側と一般の人とでの、JLA/Linuxに対して期待する役割の差を
質疑応答のなかで
感じました。これは、この説明会に限らずLWCJ99全般にいえることですが...
このセッションは、Oracle, Informix, SybaseというLinuxに参入した
データベース関連の企業の人と、PostgreSQLというfree softwareのデータベース
の開発にかかわっている人とでのパネルディスカッションとなる予定でした。
しかし時間が足らず、それぞれがプレゼンテーションを行っただけで
終ってしまったのが残念です。それでも、なかなか興味深いセッションでした。
まずモデレータの方が、主要RDBMSベンダが続々とLinuxへ
参入するという最近の状況について触れました。DB運用は情報システムの
基板であることから、
- Linuxの成熟と普及が進んだ証である
- 情報システム設計でLinuxを無視できなくなって来ている
と分析していました。
これを踏まえた上で、ベンダ各社/開発者にDBプラットフォームとしてのLinux
について、
という観点からのプレゼンテーションを行う、という流れで進めてゆく
と説明しました。
Oracle
NTが3.51から4へとバージョンアップしたところでNTが不安定になった
ことを述べ、その原因が競争相手(OS/2やNetWareなど)の弱体化
にあるのではないかと分析するところから話は始まりました。
Oracleは、SolarisやHPなどの商用UNIXをハイエンド向け、
Linuxをローエンド向けと位置付け、特にWebとの連係を重視しているようです。
Sybase
USで、古いバージョンである11.0.3のLinux版をフリーで配付した、という
話から始まりました。Sybase自身の戦略が「少ない資源で早く動く」ものを
目指しているということで、そのニーズと合致しているLinuxはSybase内で
高く評価しているそうです。
Informix
Linuxマーケットの大きさを予測することは困難だが、伸び率が高いことは
わかるという趣旨の話から始まりました。Informix SEの無料配付が
117カ国で1万コピー以上されていることをとりあげ、LinuxへのDB参入の口火を
切ったことを強調していた感があります。現在最新版をLinuxにporting中だが、
実際に販売するかどうかは動向次第ということでした。
PostgreSQL
PostgreSQLがどう変遷していったか、という話から始まりました。
フリー、オープンソースでありながら、機能は本格的であり、
大規模な利用例を挙げて商用DBと比較しても遜色ないことを示していました。
オープンソースである分、Linuxに対して特別なことはこれと
いってありませんでした。
ここで時間が尽きてしまい、結局ディスカッションは行われずに質疑応答へと
移りました。しかし、そちらも時間があまりなく、結局質問は2つ程しか
行われませんでした。
- Q. Linuxにはどれくらいの力をかけているか?
- A.
- Sybase: 今後標準のプラットフォームになりえるものと考えている。
- Informix: 基本プラットフォームはSunだが、Linuxをセカンド
プラットフォームとすることを目指している。
- Oracle: 社長自ら「ローエンドはLinux」と述べている。
- Q. Linux communityへのフィードバックはあるか?
- A.
- Oracle: 現在、NIFTYでFORACLEというフォーラムを開設している。
社員個人のレベルで、MLなどへの参加を行っている。
RedHatにも出資している。
- PostgreSQL: Oracleが行っているような、コミュニティへの
参加はオープンソースにかかわる人にとっても嬉しい。
より積極的な参加を望む。
特に、不都合にならない範囲での技術的なところが知りたい。
最後の質問を、各ベンダが回答する前に時間が尽きてしまいました。残念。
Linux Community連絡会
初のミーティングは、非常に多くの地域ユーザグループや各種プロジェクトの
方々が集まって開催されました。
初めての会合ということで、各自の自己紹介から始まったのですが、結局
自己紹介だけで時間を使い気ってしまい、何かを話し合うようなことは
できませんでした。しかし、参加した方々の所属を聞くだけでも、「Linuxには
こんなにたくさんの地域ユーザグループや関連プロジェクトがあるのか」と
いうことを改めて感じることができ、非常に有意義なミーティングとなりました。
最後の方では、取材に来ていたNHKの方々も自己紹介をしていました ^^;
帰りぎわには、Plamo Linux 1.4.1とLinux/98(β版)のCDを希望者に配付
していました。NLUGでもオフラインミーティングなどで配付するためにと、
plamoを3セット分もらってきたのですが、
肝心の勉強会で
CDを忘れてしまい、今だ配付できずにいます ^^;
2日目は以下のセッションを見学しました。
このセッションでは、以下のようなことがらについて話されました。
- コンピュータ上で扱う日本語文章とはなにか
- 日本語のような非ASCII文字を扱う手段(l10n, i18n, m17n)
- 文字集合の種類
- 符号化の種類
- アプリケーションの状況
- localeの状況
- Xでの状況
- 日本語入力手段
- 開発環境の状況
- 日本語にかかわるプロジェクトの紹介
当日の発表資料が
http://octopus2.kanazawa-eco.ac.jp/lwc99-2.psにて公開されています。
このセッションでは、新たな安定kernelである2.2系列が持つ新機能に
ついて説明されました。2.2系列の開発は今も続いており、当時の解説は
既に古くなっているものもありますので、ここでは簡単に箇条書にしておきます。
- Linux kernel開発の歴史
- 現在2.2を使う上での注意点
- カーネル設定項目数の増加(2.0系列の204項目から329項目に増加)
- 2.2系列の特徴
- OSの64bit化(一部アーキテクチャ)
- 動的なカーネル設定の変更(proc fs)
- 新たなCPUへの対応(ARM, Sparc64)
- 新たなアーキテクチャへの対応(ELKS,uLinux, MkLinux, PlayStation)
- SMPの機能向上(スレッド単位で対応)
- MTRR
- フレームバッファコンソール
- さまざまなファイルシステム(VFAT, UFS, Coda fs等)
- 新しいパラレルドライバ
- IrDA対応
- ネットワーク周りの変更
- Video4Linux
- kenneldからkmodへの変更
- 各ディストリビューションの対応(RedHat, Debian, Turbo Linux, Plamoなど)
一通りの発表の後、質疑応答がありました。以下のようなやりとりが
なされました。
- Q. LinuxでNetscapeを実行すると非常に遅いのだが、フレームバッファ
を使うと早くなるか?
- A. Netscapeが遅いのは、日本語処理にかかわる部分が遅いためで、
英語版はもっと早い。問題は、日本語環境にあるので、フレームバッファに
変えたところで早くはならない。
- Q. proc fsに誤って変な値を書き込んでしまったらどうなる?
- A. カーネル側である程度チェックしている。また、書き込みには
root権限が必要なので、一般ユーザがいたずらしたりはできない。
最悪、rebootすれば元に戻る。
- Q. MTTRとはなにか?
- A. Penrium II/Proのシステム。PCI, AGPで用いると有効である。
CPUを解さないアクセスが可能になる(注:DMAとはまた違うらしい)。
- Q. スレッドレベルでのデバッグ環境は存在するか?
- A. 今のところない。
- Q. USBの対応は?
- A. 公式のkernelではまだ。2.2のリリースに間に合わなかった。
- Q. proc fsの書式に規定はあるか?
- A. まだない。今のところは、実装ごとに書式はまちまちである。
しばらくはこんな状態が続くと思われる。2.3以降で対応されるだろう。
- Q. Linux Kernel Hack Japan Projecの運営はどうなっているのか?
- A. 今のところ、MLがあるだけである。関東のメンバーで、
直接会うことはたまにある。
- Q. Slackwareと他のディストリビューションとの違いは?
- A. Slackwareにはパッケージ管理がないので、自分でソフトウェアを
コンパイルする人向き。RedHatはすぐに使いたい人向け。
Debianは管理が厳格なので、サーバ向け。
PlamoはSlackwareを、VineはRedHatをベースにしている。
商用アプリケーションを使うのであれば、RedHatの方が良いだろう。
- Q. RAIDの対応はどうなっているか?
- A. ソフトウェアRAIDは、正式サポートしている。
ハードウェアRAIDもサポートされつつある。
なんだかkernelと関係ない質問がいくつか出ていて、答えるほうは
ちょっと可哀想でした。それだけユーザが増えてきていて、そういった
人もこのようなイベントに参加している、ということの現れなんでしょうけど...
このセッションからはBOF形態で行われました。最初に、各形式を採用している
ディストリビューションにかかわっている方々の、それぞれの形式による
特徴を簡単に説明していました。その内容は以下のような感じです。
- tgz ... 江後田さん(Plamo Linux)
- そもそもtgz(tar + gzip)形式は、Linuxに限らず一般的な形式である。
初心者には難しいかもしれない。
- rpm .. 鈴木さん(Vine)
- rpmとは、RedHat Package Managementの略である。
単純なtgz形式と違って、インストールしたファイルの管理が行える。
SPECファイルを記述によって、rpm形式のパッケージを作成する。
インストールの前後、アップグレードの前後にもなんらかの(適切な)処理を
行うことができる。
- deb ... 吉山さん(Debian JP)
- 概念的には、rpmとほとんど変わらない。
debパッケージは、実際のデータとインストールするための情報を
それぞれ内部に持っている。
一通り各形式の紹介が終ったところで、BOFに突入です。以下に発言を
時系列順に並べておきます。
- Debianにソースパッケージはあるか?
- オリジナルソースと、dscファイルがある。ソースを展開するための
情報が入ったファイルもある。
- rpmとdebに管理上の違いはあまりない。
rpmは、パッケージを作成するとソースパッケージも同時に
作成される。それは、単独のファイルとなる。
対して、Debianはその辺りがバラバラである。
それぞれに長所短所がある。
- rpmは、SPECファイルに作成手順を記述する。それによって、
バイナリパッケージとソースパッケージが作成される。
ソースパッケージからは、全く同じバイナリパッケージを作成する
ことができる。
- debでは、全てのパッチを1つのファイルにまとめてしまう。
rpmは複数のパッチを当てることができる。また、オリジナルソースも
複数のものを用いることができる。この辺りに違いがある。
- パッケージ管理の違いが知りたい。
- alien(deb, rpmの相互変換ツール)の作者がWWWに
両者の差をまとめている。
- なぜdeb, rpmを使う必要があるのか?
複雑になることそれ自体がデメリットではないか?
(Plamo陣営から拍手)
- debのいいところは、aptでアップグレードが容易に行えること。
パッケージ毎の依存性も自動的に解決する。
削除も、依存性を気にせず簡単に行える。
- debはインストール時に設定などを実行させるスクリプトが用意できる。
rpmもこの点は同じ。tgzにはできないのではないか?
- tgzでも、インストーラを用意すればできる。
- tgzでは、人の作業を受け継ぐのが難しい。
rpmのSPECファイルなら、オリジナルソースやパッチの在処が明らかである。
そのため、メンテナの継承が容易である。
- そういうことは一般ユーザには関係ないのでは。
deb, rpmはアップグレードの容易さを強調するが、バージョンアップの
結果設定ファイルの書式が変化するような場合には無意味では。
- 現実の問題として、rpmはバージョンによって古いものが扱えない
ことがある。
- debなら、ar, tar, gzを組み合わせた形式なので、手動でも展開可能。
- arでは圧縮されないのでは?
- tar, gzで固められた制御情報、データをarでアーカイブしている。
- なぜdebとrpmという、似たような形式が別々に存在するのか?
- もともと、Debianが先に存在したが、正式版が出るまで立ち後れ、
その間にRedHatがrpm形式を世に送り込んだ、というのが真相。
- ユーザからは、βとVHSのようなものに見える。
できれば、勢力の強いほうを使いたい。
- Slackwareユーザでも、できれば最新のものを使いたい。
しかし、入れ換えのコストは大きい。
rpm, debの入れ換えコストはどんなものか?
- Debianでは、簡単にできる。
カーネルは特殊で、通常のtgz形式なカーネルソースから
パッケージ化されたカーネルバイナリを作成することができる。
メンテナが作成しない限り、最新版を得ることはできない。
必要であれば、/usr/local以下に自力でインストールすることはできる。
ディストリビューション全体のバージョンアップも、
システム任せで行うことができる。
- rpmもバージョンアップの入れ換えは容易にできる。
基本はパッケージ単位。
Debianのように、依存関係を自動的に解決まではできない。
ディストリビューション全体のバージョンアップならできる。
細かいところではDebianに負ける。
Turbo Linuxの場合、メジャーバージョンが上げられないことがある。
- Plamo, Slackwareには自動アップグレードはない。
きれいにバージョンを上げるのなら、一から入れ直しになる。
しかし、最近のマシンは速いからそれでもいいのでは?
わざわざ差分で上げる必要はないのでは?
- アップグレード時にバックアップすべきファイルを把握するのが大変。
途中、BOFの参加者に対して、どのパッケージ形式のディストリビューションを
利用しているかのアンケートがありました。結果、
- tgz
- 参加者中の8割程度
- rpm
- 参加者中の半分程度
- deb
- Debian-JP Projectメンバーと、あとは数人程度
という、Debianユーザにとっては非常に寒い結果となりました ^^;
更に、rpm形式のユーザを対象にして、どんなディストリビューションを使って
いるかを調べたところ、Turbo Linux:RedHat:Vine=4:2:1ぐらいの比率となりました
(以上は全て筆者の印象です。数値に客観性はありません)。
最後に、一般参加者から各プロジェクト関係者への質疑応答がありました。
やりとりの内容は以下の通りです。
- Q. カーネルのバージョンアップはどうすれば良いのか?
- A.
- deb
- Debianであれば、随意なバージョンのカーネルソースから
パッケージをユーザレベルで作成することができる。
- rpm
- 基本的に、用意されたカーネルパッケージしか使えない。
ドライバは全てモジュール化されているので、
どのユーザも同じパッケージを使うことができる。
ユーザでカーネルを作成するようなことは想定されていない。
- tgz
- お好きにどうぞ :-)
- Q. ftpサーバの管理をしているものだが、同じソフトのバイナリパッケージが
複数存在するのは無駄に感じている。今後相互運用するようなことはないか?
-
- tgz
- tgz形式は一般的です。
- rpm
- ディスクを圧迫するので置けないということであれば、仕方がない。
rpmの流通の多くはCDなので、そんなにネットワークを使うことは
ないかもしれない。
- deb
- Debian本家でも、たまにパッケージの統合をするべきかどうか
という話題は出ているが、まとまらない。
alienを使えば、deb, rpmの相互運用自体は可能である。
Debianはパッケージ数が多いので、圧迫するのは仕方がない。
最近は、雑誌に付けるのも難しい程大きくなっている。
CDベンダに期待。今後、何らかの対処は考える。
このBOFは、次のようなキーワードを主題として行われました。
- 技術的方面
-
- 非技術的方面
-
以下にやりとりを時系列順に示します。
- 個人レベルでのLinuxの利用は広がったが、仕事として使う上では問題
はないのか。フリーだからサポートがないというのは本当だろうか。
責任を負わないのは、商用でも同じではないのか。
しかし、会社ではフリーソフトは(ポリシー的に)使いづらい。
- Visual Basicでの開発で、同じ事を感じる。
基本的に、サポートに頼るよりも自分で対処したほうが早い。
企業がフリーソフトの採用に消極的なのは、今までの慣例だけでは?
- そのことを会社も認知するようになれば、問題は解決するかも知れない。
そうすれば、ベンダとしても嬉しい。
- 情報部門の人は、お金を払いたいと思っている。
払うことによって、解決することを期待している。
基本は無料、サポートは有料というやりかたで信用してくれる人もいるはず。
金銭的な部分の実権を握っている人は、そう考えている。
- 完全なサポートというのは不可能ではないだろうか。
ユーザ間で情報交換したほうが早い。
- では、現状でも問題ないのか?
- これから認知されてゆくのではないだろうか。
そういった人も安心させられるような情報を与える必要があるのでは。
- 既に、サポート会社は存在する。
これは、おおきなビジネスチャンスだ。
- いわゆるキラーアプリケーションが必要なのではないだろうか。
Linux普及初期のキラーアプリはインターネットサーバだった。
データベースはキラーアプリとまではゆかない。
GUIなプログラミングを簡単に行えるものが欲しい。
- Visual Basicのようなものが本当に使いやすいのか?
見ためにごまかされて、問題が見えなくなるのは困る。
そこを見極めてから、先に進むべきである。
そういう環境の方が大切。
- しかし、客が要求するのは見栄えのするGUIである。
NTのように売るためには、GUIは避けられない。
- gccを使ったプログラミング環境でも、
必要なライブラリを揃えるのは大変な作業。
統合され充実した開発環境が欲しい。
そういう層のユーザを取り込む努力が欲しい。
- はたして、LinuxをNTのオルタネイティブとしてとらえるのは正しいのか?
打倒Microsoftを目指す必要はないのではないか。
共存する道もある。
- メーカ製のプリンタドライバが欲しい。
ユーザの作成したものは、出力の品質に問題がある。
できれば、メーカに解決して欲しい。
- どんなレベルのプリンタドライバが必要なのか。カーネル、もしくは
もっと上の領域か。
この部分をまず解決する必要がある。
Xと印刷という部分を考えただけでも、Windowsに負けている。
- フレームバッファはどうか。
2.2系列カーネルでマルチメディア対応も進んできたので、
Microsoftを追い抜く可能性はあるかも。
- フレームバッファはハードウェアレベルの問題を解決するもので、
Xの共通化とはちょっと次元が違う。
Xは規模が大きいので、オルタネイティブなサーバを作ることは難しい。
商用サーバがXFree86にソースをフィードバックすることもある。
Xのプロトコル自体が印刷関係に関して機能不足である。
プロトコルの拡張が必要かもしれない。
- Microsoft関係の仕事をしている身としては、
安定性はそれほど顧客にアピールできない。
みためを良くすると、顧客は安心する。
きれいな画面を作るには、Linuxでは工数がかかりそう。
そのあたりをどうにかして欲しい。
- フォントが貧弱なのをどうにかして欲しい。
フォントエディタがあれば少しは良くなるかもしれない。
- はたしてフォントエディタだけでフォントが増えるだろうか。
作成には工数がかかりすぎる。
他にもなにかいいアイディアが欲しい。
- ミニコン系技術者としては、
kernelのメモリダンプが欲しい。
現状では、トラブルの解析がしづらい。
- 必要なら、そういう機能を作れば良い。
うまくいけばkernelにマージされるかも。
- ユーザが実装した機能に、特許侵害の危険性はないのか。
そういうものを回避する仕組みが欲しい。
- Linuxにオフィス製品はでないのか?
- Applixware, WordPerfect, StarOfficeなどがある。
これらの日本語化に期待。
- Just Systemの一太郎 Ark for Javaもある。
- 実際にApplixware日本語版を使っている。
データさえ共有できれば、アプリケーションは何でも良いのでは。
- Acrobat Readerの日本語版が欲しい。
- 日本語入力環境がソフトによって異なるが、
このようなインターフェースの不統一は、一般ユーザに難しいのでは。
- 実際に使いなれれば大丈夫。
- そういう環境にユーザを洗脳させるという手段がある。
- 初心者はキートップを見ながら作業をするので、
それに合わせないと利用者は増えないのでは。
- ATOKが出るそうなので、そちらに期待。
- 不慣れな人には、どれも同じようなもの。
画面上にガイドが欲しい。VJEにはあるらしい。
- 手段の多様性が重要である。
- かんな・Wnnキーボードがあれば良いかも知れない。
- xim, kinputなど、日本語入力に関する種類がありすぎるのが困る。
- dhcpとsambaでよくはまるので、一発で動くものが欲しい。
このセッションの議事録が
htt:'//www.linet.gr.jp/lswg/expo99/bof2.htmlで公開される予定だそうです
(これを書いている時点では、まだ公開されていません)。
パンフレットでは、「内容は当日発表します」となっていたこのセッション
ですが、実質「Linuxには何が不足しているのか?-利用者の欲しいものは何?」
の続きのような内容でした。
以下に時系列順のやりとりをまとめておきます。
- 古くからのユーザにとっては、Linuxを利用することは当然のことである。
OSの選択肢が多い現在において、なぜLinuxを選ぶ人が多いのだろうか?
- OracleなどのDBベンダがサポートし始めたのが大きい。
フリーなものを(客先に)持ってゆくのは恐いが、その点商用は楽。
- なぜ、Oracleなどの大手ベンダがLinuxに参入するようになったのか?
それがこのBOFの主題となるだろう。
しかし、そういった点は昔からLinuxにかかわっているユーザには見えにくい。
その辺りを、新しいユーザに聞きたい。
- ISPなどでは、割と昔からWWWサーバなどに使われている。
今後、WWWとDBの連係は必要不可欠となるだろう。
だから、商用DBが出て来たのではないだろうか。
安価な専用線が増え、個人レベルでサーバを立てる人も増えて来た。
それもニーズ増加の要因かも知れない。
- NTの安定性の悪さが一般に認知されて来ている。
そういった、認識の変化も要因ではないか?
- NT4.0 Service Pack 4には、「NTはWin95(8?)の3/1しか落ちない」
といった趣旨のことが書かれているらしい。
Microsoft自らが、不安定であることを認めている。
- IISのパフォーマンスは悪いので、Linuxを使っている。
- フリーであるからLinuxを使っている。g77が良い。
- PowerPointが落ちるのに嫌気がさし、プレイボーイの記事をみて
Linuxを使い始めた。
現在はTeXを使っている。
- 開発にかかわる人は、みなLinuxを使っているのでは。
MicrosoftとIntelが徐々に弱くなっているように思う。
各企業はそれを感じとって参入しているのでは。
- NTは、何をするにもリブートが必要なのが嫌だ。
Microsoftに嫌気がさしている人も多いのでは。
- 普段、学校でUnixを使っている。自宅でもUnix環境が欲しくてLinux
を使っている。自分の好きなようにいじれるのが良い。
オープンソースでは、いわゆる「あやしい」ことがみんなの役に立つ。
- Unixのサポートに携わっていたが、かつてのLinuxは
インストールが大変だった(最近はある程度改善されている)。
入手のしやすさが、普及の一因ではないか。
- オープンソースという概念は特に目新しいものではない。
インターネットが普及したことで、より広く知られるようになった。
インターネットによる情報入手は重要である。
- かつてのUnixでは、ソースにアクセスできる人はごく一部に限られていた。
これが変化しているのが現在の状況である。
- 上司の説得が問題。serverとしての実績は既にあるが、
clientとしてはどうか?
- (ここで「Linuxに対してserver/clientのどちらの用途に期待するか?」
という設問でアンケートが行われた。結果は半々ぐらい。)
- CUIの良さを証明するのは難しいので、やはりGUIへのニーズはある。
- ソフト開発の教育はどうなっているか。
- Linuxの開発にかかわっている人は、 基本的に自分が使いたい所に
注力するものである。今後、それで市場に良い影響を与えられるかというと、
そうでもないだろう。
まだクライアントとしてのLinuxの状況は厳しい。開発にかかわる人は
そういったことを把握しているので、クライアントに期待をする人が
多い。
- iMacはなぜ売れたか? iMacのようなLinuxを作ったらどうだろうか。
- Cobalt Qubeではどうか。
- 日本でも、企業がオープンソース的開発を行うようにならないだろうか。
- Cobaltのようなものは今後も増えそう。
- Linuxの良さは、技術面と文化面にある。
技術面だけでは良くない。ユーザと開発者との歩み寄りが必要。
- やはり、タダでつかえることと、チープなハードウェアで動作する
ことが大きい。景気も悪いので。
- World wideなサポートはできるのだろうか。サポートは今後
必要となってゆくのでは。
- Microsoft製品だと、責任を転嫁することができる。
責任を全て負うためには、それなりの技術が必要になる。
実は、責任の転嫁先が必要なだけで、サポート自体はそれほど
必要とされていないのかもしれない。
- まともなサポートは存在するのだろうか?
- ちゃんとしたサポート会社があります。
- 個人が好き勝手に開発を進めるという手法だけでは不十分。
よりハイエンドな環境への対応をどうするか。
コミュニティだけでは実現不可能ではないか。
- そういうことは、必要とする所が実装すべきであろう。
- はたして、本当に責任を転嫁して逃げ切れるだろうか。
結局は、何らかの対応をする必要がある。
- それはそのとおり。
要求されるサービスの質が変化しているかも知れない。
途中、BOF参加者でLinuxを使っていない人のアンケートが行われました。
私の感覚では、1割に満たない程度いたようです。
司会の小山さんが最後に、「これからのヒントとして役立つ意見が
たくさん出た。あえて結論を出す必要はないだろう。」という言葉で
締めくくられ、BOFは終りました。
このBOFの議事録は、
http://www.linet.gr.jp/lswg/expo99/bof3/で公開される予定です
(この文章を書いている時点ではまだ公開されていません)。
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Last modified: 99/04/27
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